Whisky Barrel Aged Coffeeとは

Barrel aged coffee

樽から始まったもう一つの系譜、今回はコーヒーの熟成方法の一つであるバレルエイジングについて。

Whisky Barrel Aged Coffee は、突然生まれた奇抜なアイデアではない。

はじまりは、コーヒーよりも先にウイスキーとビールの文化が根づいていた場所から。

from America

ルーツとして語られることが多いのは、アメリカだ。
とくにコロラドやオレゴン、カリフォルニアといったクラフトビールとスペシャルティコーヒーが同時に成熟した地域。

2000年代後半、クラフトビール業界では「バレルエイジド」が一つの表現手法として定着し始めていました。
バーボン樽やウイスキー樽でビールを寝かせ、味だけでなく過程とその背景を嗜む文化の一つ。

その延長線上で、「この樽、コーヒー豆にはどうだろうか」という発想が生まれる。

ここで重要なのは、味を足すためではなく、文脈を移すためだった点です。

to Europia

アメリカで芽生えた試みは、やがて北欧へと。

デンマーク、ノルウェー、スウェーデン。浅煎り文化と発酵・精製への感度が高い地域では、バレルエイジドはより繊細な方向へと進んで行くこととなる。

強いウイスキー感を出すのではなく、「どこまで影響させるか」をコントロールする試み。

・樽の種類
・滞在期間
・豆の水分量や焙煎度

すべてを抑制的に扱い、あくまでコーヒーであることを崩さない。

ここで、Whisky Barrel Aged Coffee は一過性の遊びではなく、一つのスタイルとして認識され始める。

バレルエイジドコーヒー

to Japan

日本にこのスタイルが入ってきたのは、2010年代半ば。
きっかけは海外ロースターとの交流や、バリスタ・ロースターの個人的な持ち帰り体験が多い。

日本では特に、ウイスキー文化がすでに成熟していたことが大きい。

スコッチ、バーボン、ジャパニーズウイスキー。
「樽」や「熟成」という言葉に、味以上の価値を見出す素地があった。

そのため、Whisky Barrel Aged Coffee も派手な限定商品ではなく、静かな好奇心の対象として受け入れられていく。

なぜ広く普及しないのか

今もなお、バレルエイジドコーヒーは主流ではない。この記事で始めて知った方もいるのではないでしょうか。

理由は単純で、効率が悪く、再現性が低いからです。

樽は毎回状態が違う。
同じ結果を量産できない。
そして、説明しないと伝わらない。

けれど逆に言えば、その不安定さこそが、このコーヒーという嗜好品の核でもある。

香りとともに、時間を飲む

Whisky Barrel Aged Coffee

そこにあるのは、ウイスキーが過ごした年月と、コーヒーがそこに触れた短い時間。

二つの時間が交差した痕跡を、あとから静かに辿るような体験です。

浅煎りのバレルエイジドコーヒー

おわりに

Whisky Barrel Aged Coffee は、コーヒーの進化であり、寄り道の記録に近い。

合理的ではないし、誰かに強くすすめるものでもない。
市場に多く出回っているものでもないため、この記事がどこまでの人に届くかも定かではない。

ただ、その一杯がどこから来たのかを知ると、飲み終わったあとの余韻が少し変わる。

樽に残っていた時間が、一杯の中でかすかに響く。
それだけで、このコーヒーは成立していると思っています。

barrel aged coffee

お近くで見かけられたら是非一度、その香りとルーツに溺れてみてください。

この記事を書いた人

H.home/Style360
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